抗VEGF療法(硝子体注射)

VEGFとは、体の血管新生にかかわる糖タンパクの一種で、Vascular Endothelial Growth Factor(血管内皮増殖因子)の略です。
抗VEGF療法は、血管新生が関与する病気の発生と悪化を、VEGFの作用を阻害する抗VEGF薬を用いて抑制し、改善させる治療です。

抗VEGF療法(硝子体注射)とは

抗VEGF療法(硝子体注射)とは

網膜疾患のうち、網膜内の血管異常・網膜下にできる新生血管の増殖・成長が原因となっている疾患があります。この新生血管の伸長を促すのがVEGFです。抗VEGF療法によって、眼内に注射して新生血管の伸長を抑えます。
具体的には、加齢黄斑変性・糖尿病網膜症・網膜静脈閉塞症・病的近視などの疾患がこの治療の対象となります。

抗VEGF療法(硝子体注射)の適応疾患と内容

①加齢黄斑変性

ものを見る際の中心となる組織が黄斑です。加齢が関わり血管新生が原因で、黄斑がダメージを受けて見えにくくなる疾患が加齢黄斑変性です。
視力低下だけではなく、歪んで見える変視症・見ようとしたものが見えない中心暗点・色が識別できない色覚異常・視野が欠けるなどの症状が現れます。

加齢黄斑変性ついて
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抗VEGF療法による加齢黄斑変性の治療

これまでに、光線力学的療法(PDT)をはじめ、内服薬・黄斑移動術・経瞳孔温熱療法・新生血管抜去術などの治療が行われてきました。現在は、加齢黄斑変性症に有効な治療方法として、抗VEGF療法が用いられています。脈絡膜新生血管に作用して、成長を抑えて退縮させる治療法で、ルセンティスやアイリーアなどの薬剤を白目部分から中心部にある硝子体内に直接注射を行います。加齢黄斑変性症の原因となる、新生血管から生じる出血や水が漏れ出るのを抑えて、視力回復を図ります。

抗VEGF療法の治療スケジュール

導入期には、1回/月ペースの注射を3カ月間行います。3カ月以降は、視力検査や眼底検査光干渉断層計(OCT)撮影や診察による医師の判断で注射を行っていきます。

抗VEGF療法の費用

加齢黄斑変性に対する抗VEGF療法には、保険診療が適応されます。一般的な負担額は以下の通りです。

3割負担(70歳未満) 約60,000円/月
3割負担(70歳以上) 上限44,400円/月
1割負担 上限12,000円/月

②網膜静脈閉塞症

網膜の静脈が詰まって、出血や網膜の浮腫を起こしてして、見えにくくなる疾患が網膜静脈閉塞症です。高血圧や動脈硬化が原因と言われています。
視神経内・網膜を走る動脈と静脈が交差する部分で動脈硬化が起こり、静脈が圧迫され、詰まることで眼底出血や浮腫(浮腫み;むくみ)が生じます。視野がかすむ・視力低下・黒く欠損して見えるなどの症状が見られます。

網膜静脈閉塞症ついて
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抗VEGF療法による網膜静脈閉塞症の治療

VEGFが、新生血管の成長だけでなく、血管からの漏出を促進し浮腫を起こすことを媒介していることが分かっています。VEGFの作用を抑える薬(ルセンティス・アイリーア)を硝子体内に注射するのが抗VEGF療法です。この注射を通常、複数回行うことで、網膜及び黄斑の浮腫を改善させます。

③糖尿病網膜症

糖尿病の合併症のひとつです。糖尿病黄斑浮腫は、成人における失明原因第1位とされる疾患です。
高血糖の状態が長くつづくと、網膜に密集している血管も影響を受けやすく、瘤が生じる・詰まる・破れて出血するなどの症状が現れます。
眼のかすみや視力低下の症状が見られ、さらに病状が進行すると、網膜剥離や緑内障などを発症し、急激な視力低下や失明に至ります。

糖尿病網膜症ついて
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抗VEGF療法による糖尿病網膜症の治療

新生血管の発生・成長を抑え、出血を防ぐ抗VEGF薬であるルセンティスやアイリーアを硝子体内に直接注射します。新生血管の浮腫みに有効とされるため、黄斑浮腫を改善させて視力回復を図ります。

④病的近視

病的近視のおよそ5~10%に起こる疾患で、眼底で出血や浮腫(浮腫み;むくみ)が生じます。網脈絡膜萎縮・網膜剥離が起こり、視力低下やものの歪み、中心暗点などの症状が現れます。

抗VEGF療法による病的近視の治療

病的近視のうち、まだ障害が現れていない場合は、慎重に経過観察を行い、特別な治療は行いません。眼底に障害が及んでいる病的近視の場合は、患者様の症状や疾患に応じて適切な治療を行っていきます。網膜剥離や近視性牽引性黄斑症であれば、硝子体手術などが必要となり、緑内障の場合は点眼薬での治療を行い、重度の場合は手術治療を行います。
また、脈絡膜新生血管がある場合は、抗VEGF療法やレーザー光凝固術が有効です。なかでも抗VEGF療法は、黄斑や網膜がダメージを受けるリスクが低いので安全な治療が可能です。