緑内障

緑内障とは

緑内障とは

眼圧が上昇して視神経に異常が起こることで、視野が徐々に狭くなる疾患です。眼が捉えた映像情報を脳に伝える視神経に障害が起こっています。
進行がゆっくりですので自覚症状が乏しいのが特徴です。
40歳以上の日本人のおよそ20人に1人が緑内障に罹患しているとされていますが、9割の人が気付いていません。

緑内障の原因

眼球内の水晶体より前の部分は、虹彩裏の毛様体で作られる液(房水)で満たされています。
この房水の出口(隅角)の障害などのために、房水の排出がうまくいかずに眼内に溜まり、眼圧が高くなり、視神経が障害を受けて視野や視力が損なわれるのが、古典的な緑内障の定義です。しかし現在は、眼圧が正常でも視神経の障害が起こる病態があることもわかっています。
緑内障の発症には、近視眼、糖尿病、家族歴(遺伝)が関係することがあり、これらを有する方は成人病検査のように、眼科定期検査を受けることが望まれます。

緑内障の症状と見え方

緑内障の症状と見え方

緑内障は進行がゆっくりで、また通常、両眼で見て生活をしているため、病状の進行に気付くきにくいです。

初期ではほとんど見え方に支障はありませんが、中期・末期と進行するにつれて視野が損なわれていきます。この変化は治療しても元には戻りませんので、早期発見・早期治療開始が求められます。

緑内障の種類

①原発閉塞隅角緑内障

水晶体と虹彩後面が接触することで房水の出口が塞がれることで発症する緑内障。

②原発開放隅角緑内障

房水の出口に異常がないのに慢性的に房水の流れが悪く、高眼圧状態が続いて発症する緑内障。典型的な慢性緑内障です。

③正常眼圧緑内障

眼圧が正常値なのに、なんらかの原因で発症する緑内障。

④続発性緑内障

ぶどう膜炎・角膜炎などほかの疾患が原因で発症する緑内障。

⑤落屑緑内障

瞳孔の縁が白くなる・偽落屑物質が水晶体表面に見られる続発緑内障。

⑥先天性緑内障

乳児期に発症する先天性の緑内障。生まれつき房水の出口に異常があり、眼圧が高くなって発症します。

⑦発達性緑内障

成長する過程で発症する先天性の緑内障。生まれたときに異常がなくても、数年以内に異常が見られて発症する緑内障。

⑧ステロイド緑内障

ステロイド剤服用による副作用で発症する緑内障。

⑨外傷性緑内障

眼球を打つなど強い打撲が要因となり発症する緑内障。

⑩悪性緑内障

緑内障の手術後に生じる緑内障。

⑪混合型緑内障

さまざまな要因で眼圧が上昇して発症する緑内障。

⑫ポスナーシュロスマン症候群

虹彩毛様体炎と高眼圧によって発症する緑内障。

⑬血管新生緑内障

虹彩や前房隅角に新生血管が作られることで、房水の流れが塞がれて眼圧上昇が起こる緑内障。

緑内障の検査

緑内障の主な原因は眼圧の上昇とされますが、日本人のほとんどが眼圧値に関係なく発症する正常眼圧緑内障です。したがって、眼圧値だけでは判断できず、早期発見・早期治療のためには定期検診を受ける必要があります。定期的に眼の状態を把握しておくことが非常に重要です。欠けた視野など、一度傷ついてしまった視神経は元に戻せません。病気をこれ以上進行させないためにも、定期的な検査を受けてください。緑内障の検査には、眼圧検査・眼底検査・視野検査・光干渉断層計(OCT)検査・隅角検査があります。

眼圧検査

眼圧検査

眼圧とは眼球の張り具合をいい、正常値は21mmHg(水銀柱)と言われています。角膜の表面に眼圧計や空気を当てて測定します。緑内障の検査では、治療の効果の判定などのため必ず行うものです。眼圧が高いということは、風船に例えるとパンパンに膨らんで硬くなっている状態です。

眼底検査

瞳孔を通して眼球内を観察します。視神経乳頭とは、網膜からの神経軸索がまとまって眼外に出るところを眼球内から見た部分を言い、少しへこんだ中心部の形状を観察します。このへこみが大きいと緑内障が疑われます。

視野検査

緑内障は、見えづらい部分が視野のなかで少しずつ広がってきます。その部分がかなり大きくなるまで自覚できないため、眼底検査などで緑内障の疑いがある場合は、視野検査を行います。1点を注視したときに、中心部・周辺部のどれぐらいの範囲が見えているかを片眼ずつ調べていきます。

光干渉断層計(OCT)検査

光を利用して網膜の断層像を得て、視神経線維の状態を調べます。光干渉断層計は非接触のため、患者様にほとんど負担がなく撮影できる最新の画像診断装置です。

隅角検査

隅角(角膜と虹彩の間)は、通常の方法では見ることができないので、隅角鏡を角膜上に当てて検査を行います。隅角の広さを調べて、開放隅角緑内障や閉塞隅角緑内障などの緑内障のタイプを判別していきます。緑内障の眼圧上昇の原因を知るためにも非常に大切な検査です。

伊丹中央眼科での緑内障の治療

一度ダメージを受けた視神経は回復が見込めません。緑内障の治療においては、これ以上病状が進行しないこと、視神経の損傷を抑えることが最優先です。治療方法は、点眼薬を用いた治療と、レーザーや手術による外科的治療があります。緑内障の原因を特定して、眼圧を下げる治療を行います。

点眼薬を用いた治療

これ以上視野障害が進まないように、点眼薬で眼圧を下げます。点眼薬には、房水の産出を抑制するものと、房水の排出を促進させるものがあります。患者様の病状に適した点眼薬を処方し、眼圧低下を図り、病状の進行を抑えます。検診で異常を指摘されたり、近視・糖尿病・緑内障の家族歴がある方は、必ず眼科を受診してください。緑内障は早期発見・早期治療開始が大切です。ご不安なことがありましたら、お気軽に伊丹中央眼科にご相談ください。

レーザー治療

外科的治療(レーザー治療・手術治療)

伊丹中央眼科では、最新のレーザー装置により虹彩切開術および選択的レーザー線維柱体形成術(SLT)を行っています。
虹彩切開術とは、虹彩の付け根部分に小さい穴を開けて、房水の排出路を作り確保する治療法で、閉塞隅角緑内障の急性発作時の治療や、発作の恐れがある場合の予防治療として用いられます。
選択的レーザー線維柱体形成術(SLT)は、房水の流出の抵抗となっている隅角の色素細胞をレーザーでつぶして、流出抵抗を減らし、房水の流出を促進するものです。このため眼圧を下げる効果が見込まれます。合併症のリスクも非常に低く、副作用もまずありません。

低侵襲緑内障手術とは

これまでの緑内障手術は、点眼治療をしても十分な眼圧下降が得られない場合や視野がさらに悪化してしまう場合に、いわば最終手段として行うものでした。その上、手術までに失われた視野は、手術によって回復することはありませんでした。つまり、病気の進行に対して緑内障手術は、これ以上悪くならないようにやむを得ず、遅ればせながら行うというものでした。
しかし医療機器の進歩と手術の安全性の向上により、“低侵襲緑内障手術(Minimally Invasive Glaucoma Surgery, MIGS)”という概念が登場しました。これは、極めて低侵襲、すなわち手術による目や身体への負担が、手術時だけでなく将来にわたって少ないという、新しい緑内障手術です。
このためMIGSは、病気の悪化に先駆けて行うことが出来、またほかの手術(白内障手術)の際に併せて短時間に同時に行うことが出来るのが特徴です。

以下、当院で行っているMIGSのひとつ 水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術についてご説明します。

水晶体再建術併用眼内ドレーン挿入術

房水は隅角の線維柱帯を通ってシュレム管に排出され(この流れの路を「房水流出路」といいます)、全身の血流に戻っていきます。この線維柱体が不適切な流出抵抗を持つことが眼圧上昇に関係していると考えられ、この流出抵抗を避けるためのバイパスを、内部が空洞のチタン製の金属(ステント)を線維柱帯に埋め込むことで作成し、房水の流れをよくして眼圧を下げる手術が眼内ドレーン挿入術です。

ステントの第1世代として”iStent”が、また第2世代のiStentとして”iStent inject W”がその後、追加承認されました。従来のiStentがステントを1個のみ挿入するのに対し、inject WはiStentとは形状の異なるステントを同時に2個挿入するものです。これにより、従来のiStentに比較し、より優れた眼圧下降効果が期待出来ます。

iStent inject Wとその大きさのわかる図


線維柱体に埋め込まれたiStent inject W

眼内ドレーン挿入術は保険適応であり、白内障手術(正式名称:水晶体再建術)と同時に、ほんの数分の時間の追加で、特に痛みなどの苦痛が加わることなく行えるのが特徴です。術後の出血がごく微量で済むという大きなメリットがあり、白内障手術単独の場合と同様、入院を要さず、術後すぐの社会復帰が可能です。

なお、iStentおよびiStent inject Wは認定を受けた医師のみが手術を行うことができます。当院はこの認定を受けた施設です。iStentのメーカー(米国GLAUKOS社)の定めるトレーニングにて基準を満たしトレーニング修了証も交付されています。

その他の緑内障手術

緑内障手術の中で、重症例に対して行われるのが、線維柱帯切除術(トラベクレクトミー、trabeculectomy)です。
線維柱帯を切除し、強膜にトンネルを作って、結膜の下に房水を導きます。そこで房水は結膜を少し膨らませて、bleb(ブレブ)と呼ばれる房水の溜まりが出来ます。結膜は、もともと水分の吸収に優れた組織です。房水はそのブレブで吸収され、高かった眼圧が低くなります。
まぶたで守られて目立たない、黒目の上のあたりに、ブレブは作られます。眼の中の房水が、手術で意図的に作られたトンネルを通じて眼の最外殻の結膜という膜に濾過されるわけで、このため別名、濾過手術とも呼ばれます。眼外に出すと言っても涙として出るわけではないのです。
術後の創口とblebの緻密な管理が必要ですので、術後はしばらく頻繁な通院が必要です。

症例
下を向いていただき写真を撮ったところ。上まぶたの下に結膜の膨らみ(ブレブ)が形成されています。ここで目の中の房水が吸収され、眼圧が正常化されます。

正面から見たところ。白内障手術も同時に行われていて眼内レンズの反射の光が認められます。 (手術1週後ですので充血が強いですが、徐々に目立たなくなります。)

緑内障は目の成人病

緑内障は現在、我が国の失明原因の第1位です。40歳以上の実に20人に1人(有病率5%)もの人が緑内障であることが示されていて、有病率は年齢と共に上がります。年齢のほか近視や遺伝、糖尿病などが危険因子といわれています。このほか、隅角がもともと狭い眼(緑内障の種類 ①原発閉塞隅角緑内障をご参照ください)、偽落屑症候群と呼ばれる瞳孔縁や虹彩縁、水晶体の表面、隅角に白い物質が付着する病気(診察でないと発見されません)(緑内障の種類 ⑤落屑緑内障をご参照ください)、などが緑内障になりやすいことが知られています。

視野や視力の異常が自覚された段階では手遅れと言われ、早期発見が大切です。緑内障で失われた視野は治療によっても回復しません。検診で視神経乳頭の異常を指摘されたら、検査を受けましょう。

伊丹中央眼科では、点眼治療から重症例に対する手術に至るまで、あきらめない緑内障治療を実践しています。また、すでに緑内障を指摘され点眼治療を受けている方は、白内障手術の際にMIGSを受けることで、緑内障の進行をその分、抑えることが出来ます。まずはご相談ください。
(写真はすべて自験例です。)