ボツリヌス療法とは
眼科領域では眼瞼痙攣、片側顔面痙攣に対し保険承認を受けた治療法です。 ボツリヌス菌が作り出す天然の神経麻痺たんぱく質(ボツリヌストキシン)を主成分とする薬を、痙攣を起こしている筋肉に注射して緊張をやわらげます。ボツリヌス毒素製剤は神経筋接合部で神経終末に作用し、アセチルコリンの放出を抑制します。これによりアセチルコリンを介した筋収縮が阻害され、筋の攣縮および緊張を改善します。ボツリヌス菌そのものを注射するのではないため、ボツリヌス菌に感染する心配はありません。効果は数日後より現れ始め、1ヶ月目くらいにピークを迎えます。 通常3~4ヵ月間効果が持続し、その後効果は徐々に消退してゆきます。 よって、継続した治療を希望される場合は追加注射をします。
眼瞼痙攣(がんけんけいれん)
目の周りの眼輪筋が、無意識のうちに繰り返し痙攣する慢性の病気です。 40~60歳代の中高齢者で発症率が高く、男女比は1:2~3と女性に多くみられます。 初期症状は眼瞼の刺激感、不快感、ドライアイ、まぶしさ、瞬きの回数が増えるなどです。 しかし症状が進行すると、もはや自分の意思では眼を開けることが出来なくなり、物を見ることが非常に困難になります。 症状の進行は緩徐ですが、自然軽快はまれです。眼瞼痙攣は、局所性ジストニア(自分では制御できない運動)に分類され、他のジストニア同様に大脳基底核を含む運動制御システムの機能障害によって生じると考えられていますが、その他にも、パーキンソン病などにみられたり、向精神薬などの投与後にみられたりもします。
片側顔面痙攣(へんそくがんめんけいれん)
顔の表情をつくる複数の筋肉が、発作性、反復性かつ無意識のうちに攣縮する慢性の病気です。40代~70代の中高年女性の方に多いです。 顔面神経が脳幹から出る部分で、延長・蛇行した動脈によって圧迫され、刺激を受けてしまうために起こると考えられています。 通常、攣縮は下眼瞼または上眼瞼に始まり、進行すると眼輪筋の他部位あるいは口輪筋など他の顔面筋にも攣縮が表れてきます。重症例では持続性攣縮を頻繁に生じるようになり、精神的なストレスからうつ状態に陥る傾向もあります。また、痙攣は睡眠中でも持続します。
ボトックス療法の具体的な治療方法は?
目標とする筋肉に細い針で筋肉注射をします。事前に麻酔クリームを塗布し、お顔への注射の痛みを緩和する場合もあります。注射にかかる時間は10分くらいです。眼瞼痙攣の場合、上瞼の両外側(中央は避ける)に2ヶ所、下瞼に4ヶ所が基本ですが、痙攣の状態によって調整もします。 片側顔面痙攣の場合は、眼の周囲に加えて眉間、口角など、攣縮が強く起こる部分にも適宜注射します。
ボツリヌス療法の副反応
ボツリヌス療法を受けた後に次のような症状があらわれることがありますが、これらの症状は一過性です。 注射してから1ヶ月間はボトックスの作用が強く出る時期ですので、目が開け難い・閉じ難い状態になることも多いのですが,効果の減弱に伴って効き過ぎ症状も楽になるので心配しないで下さい。 効きすぎを避けるために、次回の注射時には注射箇所を減らすことも出来ますが、その分、ボトックスの効果も早く切れるようになります。 ですので、初回は原則通りに注射し、2回目以降は患者様と相談しながら注射箇所を増減してゆきます。
・目が開き難い
・目が閉じ難い
・注射部位に皮下出血が起こる,腫れる
など